「マンガ×AI展」スペシャルトークショー & 恋愛アノテーション体験会を開催しました

お知らせ

「マンガ×AI展」スペシャルトークショー & 恋愛アノテーション体験会を開催しました

2024年10月30日(水)

METoA GinzaではZ世代の一般参加者を招いて「AIが変える!?未来の恋愛模様」トークショーを開催しました。漫画家の山田胡瓜先生や、現在開催中の「マンガ×AI展」オリジナルコンテンツの制作に携わった『モノガタリラボ』主宰の小泉徳宏監督、マーケッターで世代・トレンド評論家の牛窪恵さんをお迎えし、三菱電機の社内プロジェクト「AI SPEC」メンバーの斉藤辰彦さんを交えて、私たちの恋愛や感情がどのように変化していくのか、登壇者の方のお話やデータを読み解きながらのセッショントークが展開されました。

山田 胡瓜

山田 胡瓜(やまだ・きゅうり)さん

漫画家

ニュースサイト「ITmedia」記者経験を基に、「週刊少年チャンピオン」で一話完結形式のSFコミック『AI(アイ)の遺電子』を連載。同作は文化庁メディア芸術祭優秀賞、AI ELSI賞に選出、2023年7月にTVアニメ化。

小泉 徳宏

小泉 徳宏(こいずみ・のりひろ)さん

映画監督・脚本家
シナリオ制作チーム『モノガタリラボ』主宰

代表作は『カノジョは嘘を愛しすぎてる』(2013年/東宝)、『ちはやふる -上の句-』『ちはやふる -下の句-』では第8回TAMA映画賞・最優秀新進映画監督賞を受賞、完結編として『ちはやふる -結び-』(2018年/東宝)。CM、テレビドラマ、ミュージックビデオなどさまざまな映像制作に携わる。

牛窪 恵

牛窪 恵(うしくぼ・めぐみ) さん

マーケッター、世代・トレンド評論家、立教大学大学院(MBA)客員教授
インフィニティ代表取締役

これまで財務省財政制度等審議会専門委員、内閣府「経済財政諮問会議」政策コメンテーターをはじめ、内閣官房や経産省、議連などの政府委員、研究会メンバーなどを多数歴任。日本経済新聞、日経MJ、日本雑誌広告などの広告賞選考委員ほか、日経優秀製品・サービス賞などの本審査委員も務める。

斉藤 辰彦

斉藤 辰彦(さいとう・たつひこ)さん

三菱電機株式会社 情報技術総合研究所

カーナビやコールセンターなどの音声・言語処理に関する研究開発をはじめ、生成AIに関する研究開発に従事し、AI倫理に関する議論と対話の場を作る社内プロジェクト「AI SPEC」に参画。AIプロダクト品質保証コンソーシアム(QA4AI)メンバー。言語処理学会、人工知能学会、AAAI各会員

高木 由梨奈

高木 由梨奈(たかぎ・ゆりな) さん

フリーアナウンサー、タレント

アナウンサーやイベント司会、リポーターなど業務の傍ら、Z世代に向けた情報発信も行う

オープニング・今どきの恋愛事情2024

登壇者の方々の自己紹介の後は「今どきの恋愛事情2024」と題して、Z世代がどう恋愛を考えているのか最新のトレンドについて、マーケッターとしてネット時代の恋愛観やトレンドに詳しい牛窪さんに、データを提示しながらご紹介いただきました。

【いままでに交際した人数は何人ですか?】

【あなたは「恋愛が面倒」だと感じますか?(18~28歳男女)】

最初のトークでは、大学生社会人ともに3人に1人が交際経験ゼロ、その理由として、同回答者の6~7割が恋愛が「とても面倒だ」「やや面倒だ」と答えた、との調査データを紹介。
牛窪さんは令和の若者の恋愛トレンドを「タイパな恋愛」「恋より推し活」「デジタル発恋愛」だと分析、関連する調査結果を3つ挙げてくださいました。

①タイパな恋愛【なぜ「交際0日婚」に肯定的なのですか?(20~26歳男女)】

ある調査では、Z世代の男女ともに約6割が「交際0日婚」に肯定的。トップの理由は「恋愛が面倒」ですが、3位が「時間を無駄にしたくない」、5位が「直感やフィーリングを大切にしたい」で、3位、5位ともに「(直感重視の)タイパな恋愛」とも取れる回答でした。この結果に自身もZ世代であるMCの高木さんは「交際ゼロ日で結婚した後に嫌な部分が見えたら困るので、お互いを知る期間は大事にしたくて」と「交際ゼロ日婚」には必ずしも賛同できないとしつつ、周囲にはやはりタイパ重視の人が多いとも言います。

②恋より推し活【あなたにとって「大事なもの」は何ですか?】

牛窪さんは、「Z世代は恋愛に関心があるものの、他に比べて優先順位が低い」と感じているそうです。ある調査でも、「高校生・大学生で『恋愛』を『大事なもの』のベスト5にあげたのは、大学生男子のみで5位。女子では『恋愛(高校生9位、大学生7位)』に比べて『推し活(高校生4位、大学生5位)』が明らかに優位でした。脳科学的に推し活と恋愛は、心地良いドーパミンの放出のされ方が似ているそうなので『推し活』にハマると恋愛にまで気が回らないかもしれません。」(牛窪さん)
小泉監督から従来世代との違いを知りたいとの問いかけに、牛窪さんは2014年に内閣府が行った調査で、恋人がいない若者(未婚者)の約5割が『恋愛が面倒』だとした回答を例に挙げたうえで、「私が著書『恋愛しない若者たち(ディスカヴァー携書)』を書いたのも同じころ(約10年前)ですが、当時よりその傾向はさらに増えてると感じます。」 (牛窪さん)

平成26年度「結婚・家族形成に関する意識調査」報告書(全体版)|国立国会図書館インターネット資料収集保存事業サイト

③デジタル発恋愛【直近で付き合った恋人と、どのような場で出会いましたか?】

マッチングアプリが学校を上回って1位との結果と、ミレニアル世代のデータを比べるとZ世代のマッチングアプリの割合が多いので、もっと増えそうだと牛窪さん。出会いの場は既にデジタルになっているようです。
ここで会場の皆さんに「これからの恋愛について」どう思うか、3つの選択肢から選んでいただきました。

A.人間同士の恋愛が主流であり続ける

B.AIとの恋愛が増えていく

C.バーチャル恋愛やアプリでの出会いがほとんどになる

選んだ方が多い順に、C. が9名、A. が4名、B. はゼロという結果を受け、小泉監督や山田先生は少し意外そうです。「Z世代は「恋愛が」と聞いてAIとの恋愛は人間相手と違って面倒じゃないからB.を選ぶかと思ったんですが…」 (小泉さん)「B. がゼロだけど、疑似恋愛である推し活はみんなしていると先ほどのデータにもありました。今の推し活は一方通行だけど、AIが入って双方向になったら、『推し』が無限に自分の聞きたいことを言ってくれたら。話が変わってきますね。」(山田さん)

次の質問は4つの選択肢から選ぶ「AIが恋愛に関わることで最も変わると思うこと」です。

A.恋愛の始まり方(出会いのプロセスがAI主導になる)

B.感情の理解(AIが人間の感情を深く理解できるようになる)

C.関係の維持(AIがアドバイザーとして恋愛をサポートする)

D.恋愛の終わり方(AIが関係を管理・解決する手助けをする)

A.の「恋愛の始まり方(出会いのプロセスがAI主導になる)」が圧倒的多数になったことを三菱電機の斉藤さんは、タイパ重視のZ世代にとって恋愛の始まりにAIが関わることは自然なことと言います。

「マッチングアプリにAI技術が使われています。価値観の近い人と出会いやすくなったことが、タイパ重視のZ世代に受け入れられているのだと思います。また、チャットで相談に乗ってくれたり話し相手になってくれるAIも次々登場しています。人間よりも優しく、気持ちを理解してくれているような反応を返してくれるので『感情の理解』『関係の維持』『恋愛の終わり方』も今後間違いなく変わっていくと思います。恋人とのチャットのやり取りをAIに任せてしまう未来もありうるかもしれません。」(斉藤さん)
既にAIにやり取りを任せている人を知っているというのは牛窪さん。「マッチングアプリは、単純にやりとりを増やす方が、次に進める確率が上がるシステムです。ある大学院の学生は、お相手が過去に行った場所の写真やプロフィールから好みを次々にAIに読み取らせて、裏で気付かれないようにAIにチャットさせ、喜ばれたらその反応をさらに学習させる、というプログラムを開発中だと言っていました。」(牛窪さん)