全国の高等学校では、2022年度より「総合的な探究の時間」(以下、探究学習)が導入されています。これは、変化の激しい社会に対応して、探究的な見方・考え方を働かせ、横断的・総合的な学習を行うこと。いくつかあるポイントの一つに「自ら問いを見いだし探究する力」の育成があります。
METoA Ginzaでは身近な疑問を起点として社会課題をひもとき、解決のヒントを探る「from VOICE」というオウンドメディアを運営しています。このコンテンツフレームを活用した探究学習の授業パッケージが、「学生版 from VOICE」プログラムです。
METoA Ginzaでは今後も、全国の学校に向けた「学生版 from VOICE」プログラムの開発・提供を目指してまいります。
「学生版 from VOICE」プログラム
最新情報
「学生版 from VOICE」の特長
「学生版 from VOICE」プログラムは、2023年度に総合的な探究の時間の9コマを使用して、三菱電機と宮城県石巻高等学校が共同開発した探究学習授業パッケージです。さらに、2024年度は宮城県石巻高等学校で授業内容をブラッシュアップし、コマ数を増やした「学生版 from VOICE」の導入を予定しています。「from VOICE」とは、身近な疑問から社会課題をひもとき、解決のヒントを探るMEToA Ginzaの共創メディア。このコンテンツ制作のフレームに則って、解決までのプロセス=「探究」を自分ゴト化し、チームで実践していきます。
探究学習で求められるのは、まず課題意識を持ち(課題設定)、解決に向けたコミュニケーション(情報収集)や情報の精査(整理・分析)を通じて思考をまとめ、新たな気づきを発信(まとめ・表現)すること。「from VOICE」のコンテンツも、まったく同じプロセスで作られています。「学生版 from VOICE」を活用することで、一連のサイクルを無理なく、効率的に回していくことができます。
「from VOICE」のフレームワークで得られる体験
POINT01
日常の違和感や疑問が社会課題とつながっていると捉えられる。
課題設定
POINT02
社会課題に対して事業を通じて解決に取り組んでいる人とコミュニケーションできる。
情報収集
POINT03
集めた情報を取捨選択し、1つの記事にまとめることができる。
整理・分析
POINT04
取材などを通じて得た情報を、不特定多数の人へ向けて発信できる。
まとめ・表現
「学生版 from VOICE」の足跡
STEP01
オリエンテーションと「学生版 from VOICE」の紹介
1年生全員を対象にしたオリエンテーションで、「学生版 from VOICE」を使った探究学習の枠組みについて学びます。その後、さっそく個人ワークで活動開始! 最初の課題は、日頃感じている小さな疑問=「VOICE」の種を探すこと。さて、みんなが見つけた種は?
見つけられた「VOICE」の種の一例
- なんでこんなに眠いんだろう
- 宇宙の外側は何?
- なぜみかんは冬の方がおいしいのか
- なぜ誹謗中傷がなくならないのか
- どうして赤点が設定されているのか
- 異性に好意を寄せるようになる条件はあるのか
STEP02
「VOICE」の種のブラッシュアップ
一人ひとりが考えた「VOICE」の種をグループで共有し、その背景にある社会課題について考えます。その中から自分たちが取り組む「VOICE」をひとつ決め、探究学習のテーマに。以降の活動は、すべてグループワークとなります。
STEP03
「VOICE」の背景にある課題と、その解決に取り組む人を探す
「VOICE」の背景にある社会課題を見極め、その解決方法についてディスカッション。さらに、課題解決に取り組んでいる人や企業・団体を探します。大枠が決まったら、活動内容をまとめたポスター作成を開始。次回の中間発表に備えます。
STEP04
ポスターを使った中間発表
「VOICE」から見えてきた社会課題と、課題解決に取り組む人や解決方法などをポスターセッションで発表。各グループでプレゼンを行うとともに、気になる他のグループの発表も聞き、その感想を「フィードバックシート」にまとめます。
- どの「VOICE」も面白く、聞きたいと思える内容だった。
- 違った視点からの考え方や新しい視点を得ることができた。
- 自分たちにはない疑問が多く、興味深かった。
- ポスター発表は目に新しく、生徒も教員も楽しそうに取り組んでいた。
- 身近な問題から社会課題を考えるというコンセプトに生徒が関心を寄せ、みんなで議論するいい機会となった。
生徒さんの感想
先生方の振り返り
STEP05
取材先を選定
「フィードバックシート」をもとに自分たちの活動を振り返り、反省点を踏まえて次のステップへ。ここでは、自分たちの「VOICE」や課題解決のヒントにつながる「取材先」の候補を選定。アポイントの取り方やマナーについても学びます。
取材アポイントの取り方
- 取材先の基本情報を調べ、事前にわかったことや取材の目的、希望日時などを「取材準備ワークシート」に記入
- 手短に依頼できるよう、要点をシンプルにまとめておく
- 連絡方法(電話、メール、お問い合わせフォームなど)を決める
- 「取材のポイントまとめシート」で取材/アポイント取りの方法やマナーを確認
STEP06
取材をするための準備
取材に必要な情報の収集方法をおさらいし、アポイント獲得に向けて準備をします。ここで取材する内容は、最終発表の肝となる部分。取材先を選んだ理由と目的を明確にしたうえで、「取材依頼書」を作成します。
STEP07
いよいよ取材開始!
アポイントの取れたグループから、順次取材をスタート。取材当日までに対象の調査を進め、理解を深めておきます。取材方法は相手の都合に合わせて、対面、ビデオ会議、電話、メールから選択。取材で得た情報は、「取材当日ワークシート」に記入します。
STEP08
発表会に向けて整理・分析・まとめ
「VOICE」を起点に調べた社会課題や取材した内容を「活動まとめワークシート」に整理し、これまでの探究活動を振り返ります。さらに、活動で得た気づきや考察をグループで議論し、その集大成となる発表用ポスターの作成に取りかかります。
STEP09
最終成果をポスターで発表
活動のまとめとして、発表会を実施。各グループ渾身のポスターとプレゼンで、自分たちの「VOICE」と取材成果を発表します。優秀なグループには、三菱電機から「三菱電機イベントスクエアMEToA Ginza賞」、先生方から「石巻高校賞」が授与されました。
「三菱電機イベントスクエアMEToA Ginza賞」
副賞:METoA Ginzaでポスター展示
1年F組4班「なぜ学校に行かなければならないのか」
1年F組2班「笑顔でいることで何が起こるのか?」
1年B組2班「カラス嫌いのカラス共存論」
「石巻高校賞」
副賞:食堂メニュー何でも一品引換券
1年A組5班「なぜ授業は50分なのか」
1年B組2班「カラス嫌いのカラス共存論」
1年D組7班「なぜ石巻の特産品は市内で売れにくいのか」
参加者の声
この活動を通して、身近な問題に目を向ける習慣がついた。初めての取材も楽しく、いい経験になったと思う
(1年A組 男子生徒)
自分たちで課題を見つけて解決するまでの試行錯誤は、探究学習ならではの面白さ。この経験は、社会に出てからも役立つと思う
(担任教師)
国内の取材先に断られてしまい、海外の事例を調べたら新しい発見があった。あきらめず調査を進めた結果、賞もいただけたので嬉しかったです
(1年A組 女子生徒)
やらされ感なく、生徒たちが自発的に取り組んでいたのが印象的。この活動を通じ、あらためて生徒たちの力を感じた
(担任教師)
社会のために自分たちがどうあるべきか、何をすべきかを考えるきっかけになった
(1年F組 男子生徒)
生徒にとっても教師にとっても楽しく、実りある活動だった。この成果を発表だけで終わらせず、ぜひ次のアクションにつなげてもらいたい
(主幹教諭)
担当者が語る「皆さんの声を受けて・・・」
※所属・役職及び写真は取材当時のものです。
森岡玲永子
三菱電機宣伝部METoAコミュニケーショングループ
本プログラムを通じて、単なる「わかった」だけでなく立場や視点を変えて考えること、当たり前を疑う姿勢、選択肢を増やすことの意味など、サステナブルな社会に必要な要素を学生自身が見つけてくれたことに感動しました。学生の皆さんが取材した内容から私自身も沢山の気づきや学びを得ることができました。本プログラムを通じて幅広い世代に、サステナブルな社会実現に向けた仲間が増えていくことにワクワクしています。