対談 / 監督 清水 康彦 × アニメーションディレクター 畳谷 哲也

対談

2F | METoA 2 METoA VISION : Special Movie 「Re-Birth 循環の鼓動を聴く」

監督 清水 康彦 × アニメーションディレクター 畳谷 哲也映像とアニメーションで表現する、
家電リサイクルのリアリティと感動。

ミュージックビデオやCMなど、多方面で活躍する映像ディレクター、清水康彦氏。そして、いま最も勢いのあるアニメーター、畳谷哲也氏。さまざまな映像作品を手がけてきた2人が、家電リサイクルというテーマで、何を感じ、何を表現しようとしたのか。METoA VISIONに込めた想いを語ってもらった。

清水 康彦

清水 康彦(監督)

TVCM、MV、ファッション、長編映画の脚本・監督を手がけるなど、さまざまなジャンルで活躍中。SSTV最優秀監督賞など、受賞多数。

畳谷 哲也

畳谷 哲也(アニメーションディレクター、エフェクトアニメーター)

ホットジパング所属。光速縦横無尽系アニメーションを得意とする。デジタルからアナログ表現、様々なアブストラクトエフェクトアニメーションをはじめ、歌詞やロゴを用いたタイプフェイスアニメーションも多数制作。

tatamitanimation

想像と違うというより、想像以上の世界が広がっていた。

清水:最初に家電リサイクルって聞いたときは、パッとは想像つかない世界だから、映像でどんなことができるか、何かワクワクしたかな。どうだった?

畳谷:家電って捨てたらおしまいって感じだから、その先があることに驚きましたね。

清水:専門的な人が何かやってるのかな、ってイメージがあった。2人とも工場にも行かせてもらったけど、想像と違うというより、想像以上の世界が広がってた。

畳谷:工場見学は楽しかったですね(笑)。

清水:すごい楽しかった(笑)。

畳谷:たくさんの人が繰り返し手で解体していて、めっちゃ感動しました。ここまで手がかかってるのか!って。

清水:けっこう手作業でやっていて、あれを見たら、リサイクルに興味を持つはず。でも普通は見れないから、映像や展示で、手作業もあるんだとか、こういう工程なんだって知れば、家電を捨てるときの意識が変わるかなと思う。

畳谷:そうですね、僕はリサイクルに人が携わっていることにビックリしたので、このリアリティを見せたいと思いました。工場に行ったことでアニメーションの注意する点が変わりましたね。

清水:僕は、素材や物質とか、プラスチックも色まで分けていくリサイクル工程が、自然の循環と重なるように思えて。その感覚を映像で表現するには、ファンタジーな要素って大事だから、畳谷くんのアニメーションは、リサイクルや循環を表現するのに合ってると思う。

畳谷:たしかに工場行ってから、超がんばろうって思いました(笑)。

リアリティがすごくて、うわ!これだ!って感じ。

清水:DRUM TAOも、伝統的な太鼓を新しい見え方にしている人たちだから、今回のテーマには合うと思う。

畳谷:TAOの人たちは体つきとかが良いから、あの力強さをどう伝えるかは悩みました。単純に描きまくればかっこ良くなるわけではないし、描かないほうがむしろ力強さは出たりするから。

清水:たしかに、畳谷くんのアニメーションは色もシルエットもバキッとしてて、画面に出てくると目がいくから。

畳谷:TAO以外にも、ペレットとか細かい破砕をスローで撮ってて、リサイクルの生々しい感じは良いですよね。

清水:絵で伝えていく以外に、実際のモノで伝えていく価値も絶対あるなと思っていて。リサイクル工程で出てくる実物を見せていくのは良いなぁと思うよね。

畳谷:はい、リアリティがすごくて、うわ!これだ!って感じでした。

清水:でも、生々しさだけで見せていったらドラマチックにはならないから。工場で感じたリサイクルって素晴らしいって感覚を伝えるには、ファンタジーは絶対に必要ですね。

感動をそのまま映像にしていいんだ、と思った

畳谷:清水さんに聞いてみたかったんですけど、どうやって映像とか考えてるんですか?

清水:自分は感動しやすいタイプだから、その感動を伝えたいと思ってる。自分が楽しかったことって、その作品にどんどん宿っていくと思うから、楽しかったなーとか、今回は良い体験できたなってことが、そのまま映像のクオリティを決めるような感じです。畳谷くんは?

畳谷:今回もそうなんですけど、アニメーションは描けば描くほど良いってわけじゃないんだって、最近気づいて。派手な感じにしてたときもあるけど、それで生きたアニメーションになるかというとそうでもない。

清水:でも、それが必要なときもある。

畳谷:そうです、足すときも必要。でも足せばいいってもんじゃない。そのバランスは意識してます。考えるときは、なるべく同じに見えないようにしてますね。今回だと、かわいい感じよりは、もうちょっとリアルな感じかなとか。あと、なるべくいろんな人の話を聞いて、みんなの空気感を感じて創ってるところはあります。

清水:体験価値は大切。今回の場合だと、工場行ったり、話を聞いて思ったことが、リサイクルは必要だってことより、本当にあるんだなって感じだった。だから、学んだこととか、感動をそのまま映像にしていいんだ、と思いました。

工場でリサイクルしてる人すごい!ってなってもらえたら嬉しい。

清水:METoA Ginzaは、空間ごと提案しているような感じ。見に行くというより、体感しに行くところ。特にリサイクルは、理屈や技術をこまかく伝えるというより、もっと身近な視点で肌で感じるのがいいと思っている。

畳谷:カタくないですよね。勉強しにいってる感じがしないのに、いつの間にか機械とか技術とか、しれっと馴染んでいる。今回のリサイクルもきっとそうなって、みんなの頭にしれっとペレットってコトバが入っている(笑)。

清水:それいいね(笑)。64面のディスプレイも‘見る’っていうより、そこに‘いる’って感じで、現実のパノラマに近い。自分がこだわったのは、TAOの横並びのフォーメーションをパノラマで映しているカット。

畳谷:あー!あれはめっちゃかっこいいです。でもたしかに、ディスプレイとの距離も近いし、肌で感じるような空間ですね。大きい分かなり難しいけど。

清水:ケータイの画面で、1秒でピューって動くものが、64面だとビュンってすごい速さになる。

畳谷:そう、スケール感が全然違う。普段のディティールで描いちゃうと、速すぎて何なのかわかんなくなりますね。

清水:他にこんなディスプレイはないから、最初に映像見ると、音すごい!とかアニメーションかっこいい!ってことがバンッてくると思う。でも、持ち帰るものはリサイクルの意識みたいなものだと思っていて。

畳谷:2周してほしいです。わー!って1回楽しんでもらって、展示とかでリサイクルの工程を見て、映像と照らし合わせたり。いろんな工程があるのを理解してから、もう一度映像を見るとより楽しめると思います。

清水:まず体感してもらって、その後知ってもらいたい。

畳谷:普段見ることができないリサイクルの中身を知れるのは、やっぱり良いですよね。どんなこだわりがあるのかとか、どこに人の手がかかるのかとか。

清水:本当にそうだと思う。だから映像すごいってことよりも、そもそもこのリサイクルシステム自体がすごい!とか、工場でリサイクルしてる人すごい!ってなってもらえたら嬉しい。