「明治大学 渡邊研究室 × 三菱電機」特別座談会

特別座談会

METoA 3 (3F) exUI(エクスユーアイ)

「明治大学 渡邊研究室 × 三菱電機」特別座談会明治大学×三菱電機の共同研究が拓く
楽しく、心地よい未来の共同社会

METoA Ginzaで開催中のイベント「Smooth Access City − 都市の未来へ、行ってみよう」では、あらゆる人がアクセスしやすく、スムースな都市の暮らしを実現する三菱電機のさまざまな技術や製品を紹介しています。その中で注目を集めているのが、明治大学 総合数理学部 メディアサイエンス学科 渡邊恵太研究室と三菱電機デザイン研究所との共同研究による3つのプロダクト。exUI(エクスユーアイ)※1という新しい思想を取り入れることで、「扇風機」、「自動販売機」、「スピーカー」という製品のデザインや使い方がどう変わっていくのか、それが人々の生活をどう変えていくのかを模索しています。「AirSketcher」、「AnoHako」、「Stone」と名付けられた3つのプロダクトの開発にあたったメンバーに、どのような狙いや苦労があったのかをお聞きしました。

※1exUI(エクスユーアイ)
操作するユーザーインターフェイス(UI)
の一切をスマートフォン上に設計し、ハードウェアと分離して製作するプロダクトデザインの手法。

参加メンバーご紹介

[明治大学 渡邊研究室]

渡邊 恵太

渡邊 恵太

明治大学総合数理学部 准教授
1981年生まれ。明治大学総合数理学部 先端メデイアサイエンス学科准教授。シードルインタラクションデザイン株式会社代表取締役社長。2009年慶應義塾大学政策メディア研究科博士課程修了。博士(政策・メディア)。知覚や身体性を活かしたインターフェイスデザインやネットを前提としたインタラクション手法を研究。

中里 健也

中里 健也

明治大学総合数理学部
先端メディアサイエンス学科

金子 翔麻

金子 翔麻

明治大学大学院
先端数理科学研究科
先端メディアサイエンス専攻

高田 一真

高田 一真

明治大学総合数理学部
先端メディアサイエンス学科

[三菱電機]

飯澤 大介

飯澤 大介

三菱電機デザイン研究所
ソリューションデザイン部
インタラクションデザイン
グループマネージャー

吉田 諒

吉田 諒

三菱電機デザイン研究所
ソリューションデザイン部
インタラクションデザイングループ

exUIがもたらす未来の体験

渡邊研究室の皆さんは、METoA Ginzaの展示を実際にご覧になったのは、今日が初めてでしたよね。最初に展示をご覧になった感想を聞かせてください。

渡邊:新しい技術によって、外国の方だったり、お年寄りや子どもだったり、あるいは障がいのある方が、都市でいかにスムースに暮らせるようになるかが、よく表現されていると感じました。

中里:トレインビジョンとスマートフォンアプリと連動させる展示は、共同研究でやってきたexUIの思想に近いと感じました。「新しいモノ」が好きな人は楽しめる展示ですね。

金子:今回、僕らの共同研究で生まれたプロダクトも展示させていただきましたが、三菱電機の展示がどんなものかとても気になっていました。今日、実物を見てUIなども含めて見せ方に工夫があり、さすがだなあと思いました。

高田:展示の一つにあった「しゃべり描きUI」に興味を持ちました。タブレットに話しかけ言葉が指で画面をなぞることで文字になるというUIですが、外国の方や耳が不自由な方とのコミュニケーションに役立ちますね。障がいがある方でも生活しやすい街になっていくことを体感できました。

ありがとうございます。やはりUIは気になるのですね。まずは、渡邊研究室と三菱電機との今回の共同研究のテーマについて簡単に教えてください。

渡邊:我々の研究室では、実験的思考でコンピュータとインターネットを素材にして、人々に新しい価値や体験をプロトタイピングすることで体験可能な未来を発信しています。今回の三菱電機との共同研究ではexUIという考え方が、モノや人々の生活をどう変えていくのかを考えていきました。今までハード(製品)側に備わっていたボタンやスイッチが、スマートフォンのアプリなどで操作できるようになれば、プロダクトは真っ白な箱でもいいわけで、そうなったときに何が起こるのかを考えていったわけです。

進歩する技術との「追いかけっこ」

本日は実際にプロダクトを製作された渡邊研究室の皆さんにもお集まりいただきましたので、お一人ずつどのような関わり方をしていたのかを教えてください。

中里:僕は主に「AnoHako」という自動販売機の製作を担当しました。もともとはWeb系のプログラミングの授業の発表課題で製作したものですが、考え方がexUIに近いものだったので共同研究で改めてブラッシュアップしていきました。

金子:僕はexUIのアーキテクチャ構築を担当しました。今回のexUIのアーキテクチャはWeb技術を使っているんです。ですから、サーバーサイドからフロントエンドまで。それに合わせてAR※2の処理などを実装しました。

※2AR(エーアール)
Augmented Realityの略。拡張現実と訳されている。コンピュータを利用して、現実の風景に情報を重ね合わせて表示する技術。

渡邊:今回のexUIは一見アプリで提供しているように見えますが、実はあれWebブラウザなんです。

金子:そうなんです。Web技術でアーキテクチャを構築してあるので、それぞれのプロダクトのユーザーインターフェイスはWebページを作っていく感覚で簡単に作れます。

高田:僕はプロジェクト全体の進行管理・調整を担当しました。ユーザーインターフェイスをプロタクトから離すことで、今までにない価値が生まれることをどう伝えていったらいいのか。その方針については、みんなで議論し決定しますが、その際のまとめ役などです。

吉田:今回の展示に関しては、高田さんに窓口になっていただき、何かあればすぐ「高田さん!」という状態でした(笑)。

渡邊:あまり世の中には知られていない言葉だけどWoT(Web of Thing)※3という言葉もあるんです。まあ、インターネットに関わっていれば何でもIoT(Internet of Thing)※4になっちゃうんですけどね。いま、そのIoTの具体的な作り方をどうやっていくのかを真剣に考えていかないといけない時期に来ている。そうした中でWeb技術って使い勝手がいいので、Web技術をうまく活用していくことが、僕らの研究室の中では前提となっていました。

※3WoT(ダブリューオーティ)
Web of Thingsの略。IoTアプリケーションを開発するにあたってHTMLなどのWeb技術を利用してIoTの標準化を進める概念。

※4IoT(アイオーティ)
Internet of Thingsの略。建物、電化製品、車などコンピュータ以外の多様な製品がインターネットに接続され相互に情報のやり取りをすること。「モノのインターネット」とも呼ばれる。

実際にプロダクトを製作するにあたっては、どのような点に苦労されたのでしょう?

飯澤:展示する場合、来場者がどう使うかということを考えて技術を見直すというプロセスがあります。ARにしても、どのあたりで認識させたらいいかとか、展示ならではのステップがありますし、研究室ではかなり苦労したのではないですか?

金子:そうですね。実装要件が固まったのが2017年9月で、その時期に新しいiOS 11がリリースされたんです。新しいiOSでは、ARキットが使えるようになっていて、それがあったのでスマートフォンを使いWebベースでやっていこうって最終的に決めたんです。しかし、リリース直後で情報が少ない状況だったので、その点が非常に苦労しました。また、「Air Skecher(扇風機)」の位置合わせは、画像認識で行いましたが、その際に使用するOSのリリースが今年の2月。3月からの展示に間に合わせるために必死でした。