Flowers for Ginza

メインイベント

Flowers for Ginza映像と花との美しい出会い。

開催期間:2016年3月31日(木) 〜 2016年7月5日(火)

開館時間:11:00 〜 21:00  入場無料

METoA Ginzaのオープニングを彩る、第1弾イベント。

そのテーマは、銀座の街を闊歩する女性たちに捧げる、美しき花々の饗宴。卓越した感性で注目を集めるフラワーアーティスト×気鋭の映像作家たち3組のスペシャルコラボレーション・ムービーが、三菱電機の64面液晶マルチディスプレイ『METoA VISION(メトア ビジョン)』に圧倒的な迫力で花開く。フラワーアートオブジェの展示や、花にまつわるワークショップまで、鮮やかなる“出会い”が、ここに。

Special Talk Sessions 1

Nicolai Bergmann × Takuya Hosogane

人間の本能に刺さる“驚き×快楽”

ニコライ・バーグマン : 私はフラワーアーティストとして、“和と洋”というテーマを意識しながら日本で18年間活動しています。そのなかでも、とくに花によって会話が生まれるということを大事にしています。細金さんも映像というツールを使って表現活動をされていますが、どのような考え方がベースにあるのでしょうか?

細金卓矢 : 僕はモーショングラフィックスといわれる、図形を使った抽象的な表現を得意としていますが、あまり手法にこだわらずに活動しています。ベースに置いているのは、生理的欲求や快楽に忠実に作るということ。人間の本能に訴えかけていくということは大事にしていますね。

— ニコライさんの“花”を、細金さんが“映像”で表現するという今回のコラボレーションについて、どんな印象をお持ちですか?

ニコライ・バーグマン : 花と映像を通して新しいものが生まれるというのは、とてもクリエイティブなことですよね。フラワーアーティストとして、自然で普遍的な花という素材を使って、何かをクリエーションできることに喜びを感じます。

細金卓矢 : 僕自身は、フラワーアレンジのように設計された有機物を撮るのは初めてですね。花という動かないモチーフをどうやって動画で表現するのか…とてもチャレンジングな経験になると思います。ニコライさんは、これまで映像用に花をアレンジされたことはありますか?

ニコライ・バーグマン : 花をグラフィックにして遊ぶというのは初めてです。自分にとってもすごく新しい試みですね。私は花をアレンジするにあたって360度どこから見ても楽しめることを意識しているのですが、それが映像にどう反映されるのか、楽しみです。

細金卓矢 : 立体感を出すために、花を回転させて撮影しようと考えています。あとは、64面という巨大なスケールのスクリーンが発光していると、それだけで人間の生理的な機能に無理やり差し込んでくるようなインパクトがあるので、お客さんがどう反応するのか、とても気になります。

固定観念を解放する、新しい表現

— ニコライさんは、花選びにあたってこだわられたいことはありますか?

ニコライ・バーグマン : 紫の深めな色合いでシックな雰囲気をベースにしながら、爽やかな色を間に入れて、春っぽいけど甘くなりすぎないニュアンスにできたらいいなと考えています。

細金卓矢 : なるほど。最近、「女性=ピンクが好き」っていう認識で、何も考えずにピンクの商品を開発する“ダサピンク現象”と呼ばれる問題が取り沙汰されています。女性ならピンクと決めつけるのは逆に女性蔑視的だと思うので、今回の作品では「花=可愛い」という考え方に対抗したいと考えています。

ニコライ・バーグマン : 同感です。色味がどんな印象を残すのかということを、もっと大事にしたいですよね。私がフラワーボックスに黒を取り入れたことについて、当初は「黒はお葬式に使う色だからダメ」といろいろな人に言われましたが、そうではなく、できあがったものを見て自分がどう感じるかを大切にしてもらいたいです。

細金卓矢 : そういう意味で、固定観念にしばられない冒険的な作品を発表する場という視点でいえば、銀座はクリエイターにとって魅力的な街かもしれません。

ニコライ・バーグマン : 銀座に誕生する素晴らしい場所で作品を楽しんでもらえるのは、いちばんの魅力ですよね。フラワーアレンジの枠を超えた新しいクリエイティビティを、ぜひ多くの人に感じてもらいたい。

細金卓矢 : 僕はデカくて、眩しくて、大きいものは無条件に強いと思っています。今回の作品が巨大なスクリーンを通して視覚や聴覚にどんな影響を及ぼすのか、ぜひ自分の目で見て体感してもらいたいと思っています。

[2015年12月 東京近郊某所にて]

写真 ニコライ・バーグマン

ニコライ・バーグマン

フラワーアーティスト
デンマーク出身。東京を拠点に、北欧と日本の感性が融合した革新的な世界観を発信し、フラワーデザイン界に新たな次元を拓き続ける。

写真 ほそがね たくや

細金卓矢(ほそがね・たくや)

映像ディレクター
モーショングラフィックスを中心に、アニメーション、実写など複数の手法で映像を制作し、幅広く活動。独自の感性で注目を集めている。

Special Talk Sessions 2

THE LITTLE SHOP OF FLOWERS × TAKCOM

“空間と花”の力学と、交錯する予感

壱岐ゆかり / THE LITTLE SHOP OF FLOWERS : この神宮前の一軒家に「THE LITTLE SHOP OF FLOWERS」が引っ越してくる前は、ファッションのPRの仕事をしながら金土日だけの花屋を開くという生活を続けていました。そうしたバックボーンもあって、その人なりの空間を引き立てるようなアレンジの花を作ることが好きですね。独学なので、よくも悪くもお花を扱う上での基本的なルールを知らずに始めたこともあり、インテリア空間にひとつのプロダクトを取り入れるような感覚で、花卉かきと向き合ってきています。

花卉業—花や草木など、園芸植物を扱う産業の呼称。

土屋貴史 / TAKCOM : 僕はCMやライブ会場、ギャラリーまで、依頼に応じてどんな映像でも作るというスタンスで 活動しているのですが、花を主役にした作品を手がけるのは今回が初めてです。壱岐さんの作品からは骨っ気というか、哲学的な思想を感じるので、映像の方向性を決めるにあたって、そうした部分をどう表現するかが重要になると思っています。

壱岐ゆかり : 確かに、身につける物も好きな色合いも、かわいいよりも男性っぽいと言われることは多いですね。ただ、日頃からお客さんの用途や場所をふまえてアレンジを考えているので、とくにオーダーの一つひとつに対して私自身を表現しようとはしていないつもりです。

土屋貴史 : なるほど。今回のようにオリジナル性を求められる映像作品の制作にあたって、匿名性が高いアーティストの方の作品を題材にするというのは難しさが増しますね。

壱岐ゆかり : 映像作家の方とのコラボレーションは初めてですが、土屋さんのハイテクな映像を通して、自分の作品がどう料理されるのか、まったく想像がつきません。でも、自分のなかにある“好きなもの”を映像に落とし込むと、どういうものになるのか期待しています。

価値がない場所に“色”を描く試み

土屋貴史 : 個人的には、古く錆びて折れた釘とか、“価値がないものに価値を付ける”という映像のあり方に面白さを感じています。人が持っている既存の価値観が変わるような作品にしていきたいなと。壱岐さんは作品制作にあたって、ポリシーのようなものはお持ちですか?

壱岐ゆかり : 私も、人の価値観に響くようなお花を作りたいとは思っています。生活しているなかで花の色合いを切り口に、気持ちいい時間を提供できたらな、と。じつは、私が個人的に好きな花のスタイルは少数派な風合い過ぎることが多く、大多数の人が抱く“お花とはこういうもの”という価値観にフィットしなくて、自信を失うことも多々あります。でもそのなかで、新しいバリューを感じてもらえるような色合いを選んでみるようにはしています。お花の表情をどうやって出していくか、楽しくもあり難しくもありますね。

土屋貴史 : 確かに、花ってどれだけ頑張ってもバリエーションが出しにくいですよね。もともときれいな だけに、ハードルが高い部分はあるかもしれない。

— 今回の作品を通して、観る人に何を感じてもらいたいとお考えでしょうか?

壱岐ゆかり : エゴイスティックな作品というよりも、単純に、私なりのフィルターを通したいろいろな“きれい”を感じてもらえたら。その上で、自分がいいと感じる“色”を通して、観る人に新しい価値観をもたらすことができたらと考えています。たとえるなら、今まで白い服しか着なかった人が「こういう淡い青も着てみようかな」と思ったり、銀座という都会の喧噪のなかでもずっと見続けていたいと思うような、心地よい映像。いろんな色鉛筆の色合いがあるように、今回は“リトル”のカラーパレットとして、少しでも多くの方の脳裏に焼き付く映像になるといいな、と考えています。

土屋貴史 : 僕は逆に、壱岐さんの内なるエゴを引き出せたら成功かなと。他の人ではなく、僕が映像を作るからには、“なんとなくきれいな映像”で終わらないようにしたいですね。誰もが思わず立ち止まるような、驚きと発見がある作品にしたいと思っています。

[2015年12月THE LITTLE SHOP OF FLOWERSにて]

写真 壱岐ゆかり

壱岐ゆかり(いき・ゆかり)

THE LITTLE SHOP OF FLOWERS主宰 / フラワースタイリスト
インテリア、ファッション業界を経て同店を立ち上げ。形や華やかさにとらわれず、生活や空間に合った自由な花のあり方を提案する。

写真 土屋貴史

土屋貴史(つちや・たかふみ)

TAKCOM 映像ディレクター / アートディレクター
高精細な画作りで各界から注目を集める。数十カ国の芸術祭やギャラリーで作品発表を行うなど、つねに新たな表現を探求している。

Special Talk Sessions 3

Hanaya Nishibeppu Shoten × Haiiro Ookami × TOKYO

古道具×花のセンシティブな空間

西別府久幸 / 花屋 西別府商店 : 古道具と自然物を使って、これまで誰も作ったことのないような空間を作るため、佐藤と二人で「はいいろオオカミ+花屋 西別府商店」を立ち上げました。僕はフローリストではありますが、花に限らず、草や木の根やキノコ、土なども扱うので、いわゆる“花屋”とは違うかもしれない。花を仕入れるときも、店に置きたいかどうかを基準に、直感で選んでいますね。

佐藤克耶 / はいいろオオカミ : ここにしかない空間や雰囲気、空気感を創る目的でスタートしたので、お店を表現するのにしっくりくる言葉がなかなか見つからないんです。たとえば、器に花を生けて飾っているとして、花や器を単体で購入するのではなく、「この空気ごと持って帰りたい」と思ってもらえるような場所として存在していたいと思っています。

谷川英司 / TOKYO : お店へ最初にうかがったときから、唯一無二の空間だということを強く感じました。普通の花屋さんとは違う、さらなる高みを目指している感覚がある。ここに置かれている商品にしても、いい意味で買うのを躊躇させるものがあります。お店の棚にさりげなく飾られている壺も、「買ってしまったらこの空間からなくなるんだ…」とか「自分の家に持って帰っても、この空気感は再現できないかも…」と思ってしまうんです。結局、このお店に一番似合っているんじゃないかなと。

佐藤克耶 : そう感じてくださるお客様も多くて、なかには購入した古道具や花をそのまま飾るための棚を作られている方もいらっしゃいます。僕たちとしても、お店に足を運んで下さる方の博物学的な好奇心を刺激するような古道具や花を、意識的に仕入れてはいますね。

匂い立つ“空間の美”を映し出す

佐藤克耶 : たとえば海外であれば、ギャラリーに行って、何か品物を選んでいるような感じで絵とかも買いますよね。僕たちのお店もそういう使い方をしてもらえるといいなと思っているんです。置いている商品も、ほぼ1点ものなので、購入してくださったお客様とは、そこを接点につながっていくような感じがしています。

谷川英司 : そのライブ感が魅力ですよね。今回のコラボレーションにあたって、このお店特有のライブ感に映像としてどれだけ近づけるか、それがひとつの目標でもあります。

佐藤克耶 : それはすごく期待させていただいている部分です。よく僕たちの作品を写真に収めてもらう機会があるのですが、構図的にとてもバランスが難しいんです。花の顔が全員バラバラの方を向いているというか。そのなかの主役に焦点を合わせるんですけど、まわりの花をどう写すかが上手く決まらない。というのも、どの角度から見ても絵になるように作り込んでいるからなんです。そういう意味で、動画だったら正しい表現で、正しく伝えることができるのかなと思っています。

西別府久幸 / 花屋 西別府商店 : 僕は意識的に作り込むのではなく、自然に突き動かされるままに制作したいと考えています。初めてこの場所で展示をしたときのことですが、ユーカリの葉を床全面に敷き詰めて、訪れた人が踏むと香りが漂う空間をつくりました。人の五感を刺激するようなことをしたいと常々思っているので、映像にもそうしたものが反映できるといいなと。

谷川英司 : お二人の世界観は、華やかさや派手さが削ぎ落とされていますよね。生きていること自体が美しいというメッセージを見せられているというか。飾り立てていないのに、ある意味エゴイスティックで媚びない意志をすごく感じる。そういうところがすごくいいなと思っているんです。なので、お二人の作風を読み解いて、より詩的な映像作品として描けるといいなと考えています。たとえば、映像に落とし込んだときにバックボーンが見えるものというか、花が育ってきた歴史や時間が透けて見えてくるようなかたちで新しい魅力を引き出すのが、今回の僕に与えられた使命ですね。

[2016年1月 花屋 西別府商店+はいいろオオカミにて]

写真 西別府久幸

西別府久幸(にしべっぷ・ひさゆき)

花屋 西別府商店 店主 / フローリスト
「はいいろオオカミ」での展示を契機に、空間を共有。木の根やキノコ、古木など、独自の見立てで世界観を表現するほか、自身の個展なども開催している。

写真 佐藤克耶

佐藤克耶(さとう・かつや)

古道具 はいいろオオカミ 店主 / 古物商・建築士
店名はロシアの民話『イワン王子とはいいろおおかみ』から。ロシアや日本の生活に根差した古道具を買い付けるほか、住宅やインテリアの設計も行う。

写真 谷川英司

谷川英司(たにがわ・えいじ)

TOKYO 映像ディレクター
2013年にTOKYOを共同設立。従来の映像表現のみならず、プログラミングなど新しい手法を取り入れた企画演出で、全世界的に評価を集める。